イギリスの持続可能な未来的暮らし−地域コミュニティ、地域・住宅開発、体験型施設、ショートコース

前回に続き、新しい暮らしのあり方を探って、ここでは「地域コミュニティづくり」「エコビレッジ」「地域・住宅開発」「体験型施設」「ショートコース」といったキーワードで持続可能な社会にまつわるイギリスにおける取り組み・団体などを整理しておこう。

  • エコな暮らしを目指して地域の人たちと一緒に育む地域コミュニティづくり「トランジッション・タウン」
    • トランジッション・タウン・トットネス :石油に依存しない社会へと移行を目指した、つまり、日々の暮らし方を地域の人たちと一緒に、よりエコにしていく草の根地域コミュニティであるトランジッション・タウンの先駆け。地域通貨、自転車促進、シェアガーデンなど様々なプロジェクトがありますが、この動画を見ると、何よりも地域の人々の関係がいい方向に向かっているようです。トランジッション・タウン・トットネスの全容はこちらの研究資料(日本語)が概要を掴むのにわかりやすい。エネルギーについては、2030年までにエネルギー需要を50%減らし、残りの50%を再生可能エネルギーにする計画を描いている*1トットネスは、人口も1万人に満たない小さな都市。それがこれだけのムーブメントに育っているのは、そこに暮らす人々のおよそ3人に2人が心理学系!という噂もあるくらい「特別」な町のようです。
    • トットネスの地域コミュニティづくりに賛同し、世界でトランジッション・タウンを目指した運動が広がっていて、ロンドンでも、日本でもコミュニティがあります。NPO法人トランジッション・ジャパンを中心に、日本語でも多くの情報がありますね。各地で起こっている動きを支援しているのが、Transition Network(オフィスはTotnes)。ちなみに、英・Guardian誌では、トランジッション・タウンは環境カテゴリの一キーワードであり、Totnesはイギリスの未来の町として紹介されています。日本だとトランジッションという言葉を使わずとも、環境との共生が一つの重要な点として認識された上で、地域コミュニティづくりに取り組む活動があると思います。

トランジッション・タウンという用語は使わなくても、向いている方向は大きくは同じでエコな暮らし方を求めた地域コミュニティ。

    • フィンドホーン:妖精がいるスピリチュアル・コミュニティとして日本の方も知っている人も多いと思いますが、エコビレッジ体験、パーマカルチャーやトランジッションタウンなどのワークショップを実施している(日本語も一部あり)。また、大学も運営しており、大学院プログラム(MSc Sustainable Community Design)やバイオミミクリ−などのショートコースも行っている。
    • (参考)オーガニック農家でのボランティア機会をマッチングさせるWWOOF-UKをみると、個人の農家だけでなく、他にもコミュニティがある。また、Global Ecovillage Network(GEN)のイギリス支部のサイトは情報が古そうですが、他にもコミュニティがあるよう。例えば、Redfield Community:Buckinghamshireにあるこのコミュニティでは、WWOOFERや訪問者の受け入れを定期的に行っている他、パン・バター・チーズ作り、木工、ガーデニング、キノコ狩りなどのコースがLow-Impact Living Initiativeにより実施されている。また、Braziers Park:Oxfordshireにあるこのコミュニティでは、週末を中心にハーブ、ヨガ、太極拳などのコースを提供している。
  • 地域・住宅開発
    • BedZED *2:ロンドンの郊外にあるエコ集合住宅。世界から見学者も多い。

あと、持続可能なコミュニティ開発に向けて取り組む組織には、Beyond Green などもある。

  • 自然・暮らしを楽しむ体験型施設
    • エデン・プロジェクトコーンウォール州にある半球型の植物園が特徴的な環境教育複合施設。観光名所の一つにもなっているが、若者の学び・遊びの場でもあると共に、地域・社会に対する様々なプロジェクトも行っている。地域コミュニティが未来を描くためのビジョン作り、受刑者やホームレスなどがガーデニングスキルを身につける支援などを行っている。
    • リバー・コテージ:田舎&食/料理を楽しむ場所として訪れてみたい場所。1998年の自給自足のテレビ番組からはじまったリバーコテージは、今やビジネスを展開するまで拡大し、料理教室、プリマスなどでのレストランも行っています。料理教室は1日230ポンド、4日間で650ポンドと値が張りますが、動画を見るとかなり楽しそうです。経済的&時間に余裕がある人向けだな。退職後の人を主な対象に、ビジネスとして回りそう。
  • サステナビリティ・環境関連のプログラム
    • Schumacher College:持続可能な暮らしのための学びの場として、環境、経済、人間との関係を全体としてホリスティックに捉えた教育を行っています。ショートコースや大学院プログラムを提供していて、オルタナティブ教育の場として世界中から人々が訪れています。日本から留学された方のブログなど、日本語でも参考になる情報がインターネットで見つかります。来週はTotnes訪問と合わせて、ショートコースに初参加予定。雪に囲まれ、相当寒い時期ですが、日々の食事を含めた暮らしを見直すいい機会。楽しみだな。
    • フィンドホーン(上述)
    • Centre for Alternative Technology:再生エネルギー、持続可能な建築に特化しており、大学院プログラムだけでなく、ショートコースもある。ショートコースは、その他にサステナビリティ教育、木工、オーガニックガーデニングなどのショートコースがある。「馬を利用した材木の切り出し」コースはイギリスならでは。


この他に、パーマカルチャーについては1日コースなどいろいろな場所で行われています。例えば、Brighton Permaculture Trust は週末にパーマカルチャー、ガーデニング(キノコ栽培)を中心としたコースを実施。また、住まいのエコリノベーションなどのようなコースも展開している。園芸関連については、相当な数の団体があります。


また、フィールドワークについては、例えば、非営利団体教育機関Field Studies Councilという団体がフィールドワークを通じて生物、地理、科学を学ぶコースを提供している。対象は、個人、家族大学、学校の先生や環境教育関係者などが中心の他、研究機関や大学の課外活動としても利用されている。イギリス各地に学習施設があるが、各拠点によってコースの内容が異なる。生態系や環境保護関連をみると、例えば、Acorn Ecology - Ecology Trainingは、生態系コンサルティングを提供する他、生態学者や環境保護専門家、及びそれらの領域を目指す人のためのショートコースやディプロマのコースも実施。その他、生態系の調査、インタープリター、学校や一般の人向けの環境教育も実施している。環境保護・ボランティア団体のBTCVは、園芸、環境保護関連のショートコースやディプロマのコースを提供。


トランジッション・タウンのような地域コミュニティづくり、食、ファッション、アートなど、それぞれの領域で、より良い社会に向けた新たな取り組みが動いていますが、ロンドンのような大都市には、そういったイニシアチブを取るソーシャルイノベーターが分断されずつながる場所として、HUB(Hub King's Cross, Hub Islington, Hub Westminster)のような場所もありますね。新しいアイデアを生み、イニシアチブを取る人たちが働き、出会い、つながる場所。あと、Green Drinksもロンドンでやっているよう。未来に目を向けたいろいろな人たちが、アクセスできるオープンな場、いい流れを生むな。

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追記(2012年2月15日):企業〜子供まで多岐に渡る対象に向けて学びの機会を提供するソーシャル・エンタープライズ Embercombe
http://www.communities.gov.uk/documents/housing/pdf/ecotowns.pdf


イギリスのエコタウンに関するリンク(2008年の進捗レポート