ロンドンの持続可能な食に向けて取り組む組織

ロンドンの持続可能な食に向けて取り組む組織
ロンドンの街で暮らして、定期的に開かれるファーマーズマーケットの数がそこそこあって生産者がわかる地元の食材を購入できる、スーパーで選べるオーガニック食品の種類が多いなど、環境にとっても人にとってもいい食を選べる動きがあるな、と感じています。

この動きの背景には、UKのオーガニック食品・農業を長年にわたって取り組んできたソイル・アソシエーションをはじめ、多くの個別の組織が上記のような活動に関わっているわけですが、個々の組織の連携を支援し、「ロンドンの持続可能な食の未来」に向けて後ろで支えている組織の一つに「Sustain」があります。

「ロンドンの持続可能な食」の背景を語るには、まずロンドン市長の取組みについて触れておく必要があるようです。ロンドンは持続可能なワールドクラスの都市としてのビジョンを掲げており、それに向けて、食に対しても取り組むプランを立てています。2006年に発表されたロンドンの持続可能な食に関するロンドン市長戦略によると、2016年までの10年にわたり、ロンドン市民の健康を改善し、持続可能な食を築いていくことをうたっています。ちなみに、バークレイズ・サイクル(有料シェアバイク)にしてもそうですが、ロンドン市長のリーダーシップ(あるいはそれを後ろ/横から支えている人・組織)が大きく影響しているんですね。


Sustain:Alliance for better food and farming

Sustainは、より良い食と農のためのアライアンス組織として、暮らす・働く環境を改善し、公平でより豊かな文化に包まれた社会へ向けて、食・農に関する政策や活動を推進している。1999年に、ヘルシー・プラネット・フォーラムというヨーロッパのNGOら向けのイベントを主催したUNED-UKにてはじまった組織。組織運営は会員費、政府補助金、寄付金により賄われている。活動は以下の通り。

  • 会員の活動を強化するために、情報交換を促進。メディアや政策機関に対して、彼らの活動を促進させる支援を行う
  • 個々の問題に共通する課題についての政策を考案・実現させるため、メンバー間のネットワークを強化し、組織らとの提携を進める
  • 食・農に関する政策や法律が、説明責任を負うものであり、かつ社会面・環境面の責任を果たすものであるよう、政府や規制機関に対して助言・交渉を行う
  • 健康的で環境にもいい食品が生産・加工され、市場に流通するよう、ビジネスを促進する。また、持続可能な食品を人々が手軽に選べるよう政策や取組みを考案、投資し、維持していく

具体的には現在以下のようなプロジェクトを進めています。これ以外にも、「オーガニック・ターゲット・キャンペーン(1999年から実施)」など複数の過去のプロジェクトがウェブサイトにまとめられています。※公式訳ではない

  • 子どもたちをジャンクフード市場から守り、よりよい食事(給食)を食べさせようというキャンペーン。
  • 気候変動と食・農について
  • 心身ともに健康であることと行動の関わりについて
  • 食べ物と環境保護・社会的公正・健康の改善に関するレポート集
  • 学校、病院、ケアホームなどにおける持続可能で健康的な、より良い食に関する法律に対するキャンペーン
  • 学校、病院、ケアホームなどにおける持続可能で健康的な、より良いを増やす具体的支援
  • 持続可能・健康の観点から基準を満たすような、より良い食事に関するトレーニン
  • 持続可能で健康的な食品を促進する地域の取り組み
  • 持続可能で健康的な食を提供する生産者、小売業者、ケータリング業者、消費者らを支援
  • 生産者がしっかりとわかる地元で生産された、新鮮かつ健康にもいい食品を増やすことにより、人と土地を再び繋ごうという取組み
  • 2012年ロンドンオリンピックパラリンピックにおける持続可能な食に関する取組み
  • 持続可能な食品の購入・利用に関心がある人々向けた実用的なガイドライン
  • ロンドン、イギリス、世界における都市農業(菜園)に関わる情報提供(City Harvest)
  • ロンドンの10の貧困地域において、手頃な価格かつ持続可能な方法で生産された食品が住民の手に届くよう支援

Sustainでは上記多くのプロジェクトを進めているが、更に、以下のような取組みも独立したサイトとして運営している。

  • The Jellied Eel: ロンドンの持続可能な食に関するニュースを発信
  • City Harvest: ロンドン、イギリス、世界における都市農業に関わる情報提供
  • Capital Growth: 2012年末までに、新たに2012の菜園を作るキャンペーン
  • Food Co-ops: 地域の「Food Co-op」の検索や新規運営に関する情報提供
  • Real Bread Campaign: 自然素材のパンを推進するキャンペーン

中でも「2012年の終わりまでに、新たに2012の菜園を作ろう」という壮大かつ具体的な目標に向けて進められている「Capital Growth」というプロジェクトは、ロンドンの未来に向けてとりわけワクワクさせられる企画。次にまとめます。


Capital Growth 〜2012年末までに、新たに2012の菜園を〜

「2012年の終わりまでに新たに2012の菜園を作って、ロンドン市民らの手でロンドンを変える、その支援をしていきたい。」という熱い思いで進められている。英国の国営くじ基金大ロンドン市(Greater London Authority)の出資のもと、サステインが運営している。ロンドン近郊において、菜園をより身近なものとし、コミュニティにおける野菜づくりを促進することを目的としている。コミュニティ菜園プロジェクトを実現させたいグループに対して、以下を提供している。

  • 情報提供:メンバー向けの菜園作りサポート情報、ニュースレター
  • イベント・ネットワーキング: 似通ったプロジェクトにおける成功事例の共有など
  • レーニング: 実践的なトレーニングや専門家によるアドバイス
  • 補助金
  • 土地所有者へのアドバイス
  • 種苗購入の割引 など

菜園をやってみたい人に対して、場所探しの方法やオーナーとのやりとりなどについてもまとめていたり、細かいガイドがあって実用的です。ちなみに、東京では自由が丘や銀座で行われていますが、ロンドンでもミツバチを育てようという「Capital Bee」キャンペーンがCapital Growthと並んで進められています。

リンク

感想

2012年までに2012の菜園なんて、将来に向けて市民として関われる楽しい計画。うちのハーブコンテナももう少しアップグレードさせたいところ。

こういった計画があったら参加してみたいと思うのは、ロンドン市民だけではないはず。

ロンドン市長トップと、個々の組織をつなげ課題に対する政策や取り組みを考案・実現を支援するサステインのような組織との連携があって、ロンドン2016年に向けて着実に進んでいるように思います。

(20110125加筆修正)